小さな奇跡
夜、スタジオから家に帰ると、リビングでお香を焚きながら、一人反省会を日課としている。
10cmほどのお香をお香立てに差し火を付ける。
お香の火が消えるまでのほんの僅かな時間の中で自分に対するものからそうでないものまで「不満」と云う「不満」が頭の中を駆け巡る。
その日もいつものようにお香を焚き、静かに立ち上る煙を見ていた。やがて煙が出なくなり、お香の火が消えるのを待ってゆっくりとお香立てを持ち上げた。すると、
いつもならすぐ倒れてしまう燃えきれなかった2cm足らずのお香が、灰を載せた状態で真っ直ぐに凛とした姿で立っていた。「奇跡だ」そう思った瞬間、随分と昔に東京シティバレエの先代の理事長・石井清子女史から頂いた言葉を思い出した。
「いつの時代も、不満があることは大事。それがあるから人は努力するのよ」と。
小さな奇跡は、その日の不満を翌日の活力に変えてくれた。


